メンバーが行き詰まっていたらどうする?

 

From 石原達哉

自宅の書斎より

 

人は上手くいかない時、視野狭窄になります。

私も昔、、

かれこれ30年くらい前、
新規開拓の飛び込み営業をしていました。

 

当時は池袋営業所にいたので、
サンシャイン60のビル倒しを
よくやりました。

 

ビル倒しってご存知ですか?

 

ビルの最上階までいって、
上から下まで
1階ごとに、
しらみつぶしに
飛び込み訪問を
することです。

 

サンシャイン60は、
30年前当時
池袋界隈ではおそらく
一番家賃が高かったと思います。

 

なので、
儲かっている企業が多く集まっていました。

だから、いろいろな営業マンが目をつけます。
飛び込み激戦区なわけです。

当然、私も飛び込みをします。

すると、、、

 

「またリクルートか!いい加減しろよ!!
 代理店も含め、毎日毎日取っ替え引っ替え
 いろんなやつに飛び込ませやがって!

 リクルートは営業妨害だ!!」

 

と怒鳴られ、
追い返されることも結構ありました。

 

すると
”また怒鳴られるかも?”と恐くなり、
次の会社に飛び込めなくなります。

 

入り口の前を何度も行ったり来たりして、

しまいには非常口から非常階段に逃げ、
そこに座り込み、

「よし14時30分まではここで休もう!」

「キリの良い30分になったら、
 勇気を振り絞って飛び込み再開だ!!」

と決めるのですが、

それが14時45分までになり
15時までになり、、、

なんてことが何度もありました。

そんな時

「なんで俺は今、こんなことやっているのだろう?」

「本当にお客様には迷惑なのではないだろうか?」

そんなことを考えていました。
そして、ますます動きが鈍りました。

そうこうしているうちに四半期が終わります。
そんな状態ですから当時の営業成績は散々でした。

 

リクルートでは四半期ごとに
事業部ごとのキックオフという総会があります。

頑張った人を表彰することが一つの大きな目的ですが、
最後に必ず事業部長のスピーチがありました。

単純な私は、事業部長のスピーチに

勇気をもらうことが多くありました。

例えば、印象に残っているのは以下のような話です。

 

時期的には7月、

第2Qの始まりのキッキオフだったと思います。

「新人さん達はもしかしたら、今、
 毎日毎日、飛び込んでは断られ、
 いったい何をやっているんだろう?」

 「こんなことがやりたかったのではない。」

 「そもそも世の中の役に立てていないのでは?」

そんなことを考えているのかもしれない。

しかし、

ちょっと考えて欲しい。

君たちが今、何をやっているのかを、、

 

君達がやっているのは、
もっと会社を大きくしたいと思う
社長の夢を人の採用を通して手伝う仕事だ。

 

事業は人が作る。
商品・サービスも人が作る。

 

人がいなければ始まらない。

 

そして”いい人”というのは会社によって異なる。

更には、
その会社がどっちの方向に舵を切るのかによっても異なる。

 

即ち、採用は経営と直結する重要な仕事だ。

中途採用が企業の2年後、3年後を作るのだ。

 

 

君たちにお願いがある。

 

まずは大好きな社長を見つけて欲しい。

尊敬できる社長を複数見つけて欲しい。

 

そしてその社長の会社に
いい人が採れる提案をして欲しい。

 

社長は孤独だ。

 

社内の人間には弱音は吐けない。
迷いを見せることすらできない。

 

だから君達が、

なんでも話せる相談相手になって上げて欲しい。

 

今、やっている飛び込みは、
君達が大好きな社長に巡り合うために必要な過程だ。

 

そういう社長に出会えたら、
君達の仕事はとても楽しくなる。

 

そしてそういう社長の期待に応えようとすることで、
君達は大きく成長できる。

 

この仕事の醍醐味はここだ。
これを知らずにめげてはもったい無い。

今が踏ん張りどころ。
どうか頑張って欲しい、、、

 

 

更に、もう一つ。

リクルートがやってきたことをお伝えしたい。

君達の先輩たちがやってきたことは、

 

人生に「転職」という選択肢があるということを
世の中に認知させたことだ。

 

終身雇用が当たり前の日本の世の中において、
「転職すること」は後ろめたいことだった。

”できない人”が転職をするという誤解があった。

 

これに対して、

そんなことはない。
転職することは悪いことではない。

むしろ、
自分自身のキャリアを真剣に考えるなら
転職を視野に入れるのは有り。

そういう価値観を作ってきた。

 

Bing(ビーング)には毎週、
約1000社の求人情報が載っている。

 

1社に1人づつ転職が決まっているとすれば、
毎週1000人の人生の選択肢を提供しているということ。

 

読者は一人一人、
今の自分にもっと良いところはないかな、
と、転職先を探している。

 

君達が頑張っているから、
彼らは自ら1件1件、企業を訪問して
「今募集してますか?」と
聞き回ることなく、

自宅にいながら、情報収集ができている。

 

私達は、世の中の人に、

幸せになるために転職という

選択肢を増やすという、

価値の大きな仕事をしている
ことを忘れないで欲しい。

と、、、

***

 

人は行き詰まっていると、視野狭窄になります。

目の前の辛い事象ばかりに目を奪われます。

 

そんな時に管理職がやるべきことはたったの一つ。

 

それは、、、

 

メンバーの視界を拾げ、視座を上げること。

 

そして、彼らがやっている日々の仕事の
意味や意義をきちんと説き、腹落ちさせること。

彼らが腹落ちできるまで十分な対話をしてください。

 

それができるかできないかが
管理職としての価値の分岐点かもしれません。