人に自由を与えるルールとは?
From 石原 達哉
地元のファミレスにて
大きな社会問題になっている
日大の内田監督問題ですが
昨日、
関東アメリカンフットボール連盟の裁定が
下されました。
意訳をすれば
「お前は大嘘つきだ!だからお前は永久追放だ!!」
という
時代劇の大岡越前ような名裁定に、
小気味良さを感じている私です。
そして今日は
“ルール”
について考えてみたいと思います。
ルールは何のためにあるのでしょうか?
ルールと聞くと、多くの人は
窮屈さを感じたり、
自由が奪われるとか
縛りつけられるなど、
ネガティブなイメージを持つ方が
多いのではないでしょうか?
学生時代の
細かすぎる校則や風紀ルールの影響を
引きずっているのかもしれませんね笑。
このイメージは、
企業経営においても
そのまま持ち込まれているように
私は感じています。
統制を取るためのもの、
従わせるもの
というニュアンスが
多いように私には見えています。
破ったら罰則というのは、
守らせるためには必要な手段ですが、
これは減点主義的な考え方で、
この裏側には、
北風型のマネジメントの影が
チラチラと見えてしまうのです。
私が考えるルールとは、
より自由を与えるためのものであるべきだ
と考えています。
まさに今回の
アメフト事件の発端となった
危険タックルの問題。
投げ終わったばかりの
無防備な状態の選手に
タックルはしてはいけない。
見えない背後からの
タックルはしてはいけない。
これらのルールは全て
選手の安全を守るためにあります。
このルールを
みんなが守ることが前提にあるから、
選手は安心してプレーが出来るし、
血気盛んな大男たちが相手に対して
力の限り本気でぶつかることができるのです。
即ち、
ルールの中でなら
好き勝手にやっていいよ。
思う存分、暴れまわっていいよ。
あなたの強みや個性を発揮していいよ。
それがルールの本質だと思うわけです。
体力やパワーや俊敏性に優れた猛者たちが
”お互いに怪我なく安全にゲームをするため”
という目的があり
彼らに、
ここまではOK。
これ以上はダメ。
という
境界線を示しているのが
ルールだと思うわけです。
ゴルフに例えれば、
フェアウエイとOBライン(境界線)
を示すものがルールではないかと
思うのです。
私は入社7年目の時に、
リクルートから出向し、
新会社の立ち上げを経験しました。
それはバブル期に
リクルートが資本を出して設立した
4つの代理店を統合して作った新会社でした。
当時はリクルート社内も
商品領域別の事業部でしたので、
新会社には実に7つの
異なる出身母体の営業マンが
混在していました。
各々が出身母体でしていた行動を
あたり前のものとして、
なんの悪気もなく、
昔のままの行動をとろうとしていました。
みんなが考える
「正しい」や
「当たり前」
が7つ存在していたわけです。
まさにバラバラな状態です。
私は当時、営業チーフとして
一つのチームを見る立場にありましたが、
私の上に来た
リクルート社内でもとても有名な
敏腕マネージャーが
一番最初にやったことは、
新会社としての
「正しい」「当たり前」を
揃えるということでした。
即ち、
新会社のミッションを果たすために、
新会社の営業マンとしては、
こういう行動を良しとする。
一方で、
今までは良しとされてきたかもしれないが、
今後はこういう行動は好ましくない。
だから今後はNGとする。
を、行動レベルで明確にして徹底したのです。
訳も分からず、今までいた会社が無くなり、
新しい会社に籍を移された
元代理店の営業マンは、
おそらく戦々恐々としていたはずです。
しかし、基準が示されたことにより、
行動が明確になりました。
厳しすぎると言って辞めていく人も
少なくありませんでしたが、
残ろうとする人は
基準を満たすように頑張りました。
異なる出身母体からなる混成営業チームが
徐々に一つにまとまって行きました。
この経験は私にとってとても大きな経験でした。
そしてルールに関してのもう一つの観点です。
フェアウエイの先には必ずグリーンがあります。
ルールを設ける際には、
その先にあるもの=何を叶えたいのか?
何を叶えるためのルールなのか?
その目的を語ることが大事だと思います。
組織のルールであれば
組織ミッションとルールが
明確に紐づいていることが
大切だと思うわけです。
リクルート時代
おおよそ1000人くらいの
社長様とやりとりをさせていただきました。
社長室に通され、額の中に飾られた
たくさんの経営理念を見てまいりました。
僭越ながら、多くの経営理念は、
残念ながら言葉だけのものだと感じました。
私が考える正しい経営理念とは、
従業員が判断やとるべき行動に迷った際に、
基準となるモノサシとして機能するもの
だと考えます。
私は、株式会社つくるひと の
「理念ロケット(R)」という
サービスの認定コンサルタントの
資格を有しておりますが、
そのトレーニングの一環として昨年
ある会社の理念づくりのお手伝いを
させて頂きました。
自ら手を上げて志願した
有志のプロジェクトメンバーが、
全国から月に1度集まり、
約半年の期間をかけ、
経営理念に基づく行動指針を
自分たちの言葉で
まとめるという
一大プロジェクトでした。
社長の掲げる経営理念を起点に、
あらためて
自分たちはお客様に何を提供する会社なのか?
どんな世の中にする為に頑張っているのか?
そしてお客様に何を約束するのか?
さまざな部署や職種からなる
プロジェクトメンバー一人一人が、
自分たち会社の提供する価値について考え、
自分たちのありたい姿を言葉にしました。
そして議論の結果でてきた
いくつかのキーワードとともに、
そのキーワードを守るために
日々とるべき行動は何か?
自らで点検するチェック項目まで落とし込み
理念BOOKという一冊の冊子に纏め上げました。
その過程において、ある事件が起きました。
プロジェクトのメンバーの一人が、
不正(架空受注)をしており、
議論を重ねていく過程で、
自責の念に耐えかねて、
自らその不正を報告し、
会社を辞める
という事件でした。
はたから見たら、
プロジェクトに手をあげるほど
積極的な社員が一人辞めてしまった
という残念な事です。
しかし
自分たちはこうあるべきだ、
こうするべきだということが、
プロジェクトの参加メンバー一人一人の
心に深く刺さっていった証拠だと解釈すれば、
それはすごいことだと思うわけです。
小野ゆうこ代表曰く、
このサービスを導入する企業では
似たような事件は
度々、起こるといっています。
”自分たちが考え、自分たちが言葉にする”
ことの威力です。
日大の話に戻ってしまいますが、
今回、関東フットボール連盟が裁定を下し、
処分を決めましたが、
とても残念なのは、
日大の自浄作用が全く働いていないということ。
つまり、何が大事かというと、
私たちはこういう存在だ。
こういう価値をお客さまに与えるのが使命だ。
そしてこういう価値感を大事にする。
だから私たちはこういう行動をとらなければならい。
一人一人の胸の内側に
それが刻まれれていることが
最も大事で、
そういう会社になれたら、
本当に強いと思うわけです。
このような過程をへて
出来上がったルールは
上から与えられたものではなく、
自分たち仲間が考えて
徹底的に議論して作られたものなので、
そこにやらされ感はありませんし、
少なくとも作ったメンバーは
納得しています。
つまり
ルールに魂が入っているわけです。
そして身近に
そのルール作りに参加した仲間がいれば、
どういう意味なのか、
どういう議論の結果、
それがこの言葉になったのか?
を、聞くこともできますし、
もし今後、
現状にあわないことが
でてきた時には、
また自分たちで議論をして
変えていけば良いのです。
プロジェクトメンバー主催の
理念BOOKの全社発表会では、
社長ほか創業メンバーである役員たちが
全員涙をみせていました。
そして今も、
プロジェクトに参加したメンバーが、
伝道師となって、
理念BOOKに基づく行動を
いかに一人一人に浸透させられるか、
もろもろの浸透定着のための施策を
考えて実行しています。
この会社が今後どうなるのか
本当にとても楽しみです。
これもまたとても貴重な体験でした。
つらつらとまとまりなく
書いてしまいましたので、
今日は最後にまとめをします。
会社のルールは
人を縛るものではなく、
人をより自由にする、
人の個性や能力を
より発揮してもらう為のものであるべきだと
私は考えます。
その為には、
フェアウエイ、OBゾーンの境になる
境界線をはっきり示すことが大切。
そして、
ルールがなぜあるのか?
何のためのルールなのか?
という
目的を語ることが大切で、
その目的は組織目的
即ち経営理念に密接に
紐づいていることが
大事だと思います。
経営理念がブレイクダウンされた
ルールブック(行動指針)があると、
従業員はいざという時、
判断に迷わずに、
それぞれが
企業の価値を発揮する行動を
スピーディーに
取れるようになります。
これは企業価値を上げること、
更には
企業のブランドを確立することに
繋がります。
多くの会社の経営理念は
行動指針にまで
落とし込まれておらず
いざという時の
判断の指針を与えるものに
なっていないから
機能していないと考えます。
そして
浸透度や実効性を考えた時、
できればそのルール(行動指針)は
上から与えるものではなく、
ボトムアップで、
従業員たちで考え作って貰うことが
ベストです。
いかがでしたでしょうか?
今日のお話が何かの参考になれば嬉しいです。